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【テスト北川】【友坂光公認会計士・税理士事務所様寄稿記事 菅沼作成済】【公認会計士・税理士執筆】税効果会計とは?目的・仕組み・繰延税金資産の回収可能性までわかりやすく解説

公開日2025/09/04 更新日2025/09/18 ブックマーク数
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【テスト北川】【友坂光公認会計士・税理士事務所様寄稿記事 菅沼作成済】【公認会計士・税理士執筆】税効果会計とは?目的・仕組み・繰延税金資産の回収可能性までわかりやすく解説

決算業務や財務諸表の作成において、避けて通れないのが「税効果会計」です。
会計と税務のルールの違いによって、企業会計と課税所得計算の認識時期にズレが生じる場面は少なくありません。
こうしたズレを調整し、財務諸表における税負担率を適切なものとする必要があります。

本記事では、公認会計士・税理士の視点から、税効果会計の目的や基本的な仕組みから、一時差異の具体例、繰延税金資産の回収可能性の判断方法までをわかりやすく解説します。
税効果会計の実務対応に不安のある方は、ぜひご活用ください。


友坂 光様


執筆者

友坂光公認会計士・税理士事務所 代表
友坂 光

大学在学中に公認会計士試験に合格後、大手監査法人にて主に上場企業の会計監査や IPO監査に従事。
2023年に独立開業し、会計・税務を通じて企業や組織の将来を見据えた道しるべ となる支援ができ、特にグループ通算制度を含めた税金・税効果分野を得意としてお ります。
お困りの方はお気軽にご連絡ください。

税効果会計とは?

税効果会計(Tax Effect Accounting)とは、企業会計と税務上の課税所得計算との間に発生するズレ(差異)を調整し、法人税等(法人税その他利益に関連する金額を課税標準とする税金)を適切な期間に配分するための会計処理です。
企業は決算時に、会計基準に基づいて損益を計算しますが、税金は税法に基づいて計算されるため、両者のルールの違いによって利益と課税所得に差が生じることがあります。

また、税効果会計に係る会計基準では、税効果会計の目的を下記の様に記載されています。

税効果会計は、企業会計上の資産又は負債の額と課税所得計算上の資産又は負債の額に相違がある場合において、法人税その他利益に関連する金額を課税標準とする税金(以下「法人税等」という。)の額を適切に期間配分することにより、法人税等を控除する前の当期純利益と法人税等を合理的に対応させることを目的とする手続である。(注1)
(注1)法人税等の範囲
 法人税等には、法人税のほか、都道府県民税、市町村民税及び利益に関連する金額を課税標準とする事業税が含まれる。

「引用元:金融庁|税効果会計に係る会計基準

会計と税務のズレ:一時差異と永久差異

 一つの事象について、処理の方法を考える上で、「企業会計(会計)」と「課税所得計算(税務)」では、異なるケースがあり、その異なるケースは下記の2つに分けられます。

・一時差異
 一つの事象について、「企業会計(会計)」と「課税所得計算(税務)」の“認識の時期にズレ”が生じるもの(いずれ解消されるズレ)

・永久差異
 一つの事象について、「企業会計(会計)」と「課税所得計算(税務)」の考え方が異なるもの(永久に解消されないズレ)
 例えば、寄付金や交際費の損金不算入額、受取配当金の益金不算入額等が該当します。

【具体例】会計と税務の認識時期のズレ

税効果会計の対象は、「(1)一時差異」で、具体例は下記です。

(具体例)
✕1期
 取引先であるA社に対する債権について、将来において貸し倒れが見込まれたため、会計上、貸倒引当金200を計上した。
 なお、税務上は全額損金不算入であった。

※貸倒引当金の繰り入れ以外に、費用の発生は無い

(会計) (税務)
収益・益金 500 500
費用・損金 200 0
利益・所得 300 500

 法定実行税率を30%とした場合、計算される法人税等は、150(所得 500×30%)となる。
会計上の損益計算書における税負担率(法人税等÷税前利益)を計算した場合、50%(法人税等 150÷税前利益 300)となる。

✕2期
 取引先であるA社に対する200の債権について、貸し倒れが生じてしまった。
 なお、税務上は全額が損金となる事象であった。

※会計上は、✕1期に計上した貸倒引当金を取り崩したため、費用はゼロになります。

(会計) (税務)
収益・益金 500 500
費用・損金 0 200
利益・所得 500 300

 法定実行税率を30%とした場合、計算される法人税等は、90(所得 300×30%)となります。
会計上の損益計算書における税負担率(法人税等÷税前利益)を計算した場合、18%(法人税等 90÷税前利益 500)となります。

✕1期と✕2期の税負担率を確認した場合、下記の通り相違します。

✕1期:50%
✕2期:18%

 法人税等の額を適切に期間配分することにより、税前利益と法人税等を合理的に対応させ、今回の具体例の様に、貸し倒れに関する認識の時期によるズレ(会計:✕1期に費用認識、税務:✕2期に損金認識)以外に会計上と税務上で、認識の相違が無い場合は、税負担率を✕1期と✕2期とで、同率とする必要があります。
 上記目的を達成するため、税効果会計を適用しなければなりません。

一時差異のパターンと効果

 税効果会計の対象は「一時差異」であり、その必要性については上記で示した通りであるが、「一時差異」は、例えば、次のような場合に生じます。

(1)収益又は費用の帰属年度が税務上の益金又は損金の算入時期と相違する場合
 貸倒引当金・退職給付引当金等の引当金の損金算入限度超過額、減価償却費の損金算入限度超過額等が該当する。

(2)資産又は負債の評価替えにより生じた評価差額等が直接純資産の部に計上され、かつ、課税所得計算に含まれていない場合
 売買目的有価証券、満期保有目的の債券、子会社株式及び関連会社株式以外の有価証券について、時価評価をした際の時価と取得原価の差額である評価差額の合計額を、純資産に計上(その他有価証券評価差額金の計上)をする場合等が該当する。

上記の様な場合に生じた一時差異には、下記の様な効果をそれぞれ持ちます。

・将来減算一時差異
 当該一時差異が解消するときにその期の課税所得を“減額”する効果を持つもの

将来減算一時差異の例示として次のものが挙げられる。

(1) 会計上、費用として計上された棚卸資産の評価損のうち、税務上の損金として認められないもの
(2) 未払事業税
(3) 貸倒引当金の損金算入限度超過額
(4) 賞与引当金
(5) 退職給付引当金
(6) 資産又は負債の評価替えにより生じた評価差損
(7) 連結会社間における資産の売却に伴い生じた売却損を税務上繰り延べる場合(法人税法第61条の11)の当該売却損
(8) 連結子会社間で寄附金の授受を行い、親会社が当該寄附金を受領した子会社の株式の簿価を税務上増額修正する場合(法人税法施行令第9条第1項第7号)の当該簿価修正額

「引用元:ASBJ|企業会計基準適用指針第28号税効果会計に係る会計基準の適用指針

・将来加算一時差異
当該一時差異が解消するときにその期の課税所得を“増額”する効果を持つものとしては以下が挙げられる。

(1) 積立金方式による租税特別措置法上の諸準備金
(2) 税務上の特別償却により生じた個別貸借対照表上の資産の額と課税所得計算上の資産の額の差額
(3) 資産又は負債の評価替えにより生じた評価差益
(4) 連結会社間における資産の売却に伴い生じた売却益を税務上繰り延べる場合(法人税法第61条の11)の当該売却益
(5) 連結子会社間で寄附金の授受を行い、親会社が当該寄附金を支出した子会社の株式の簿価を税務上減額修正する場合(法人税法施行令第9条第1項第7号)の当該簿価修正額

「引用元:ASBJ|企業会計基準適用指針第28号税効果会計に係る会計基準の適用指針

(具体例)

・将来減算一時差異
 ✕1期
 取引先であるA社に対する債権について、将来において貸し倒れが見込まれたため、会計上、貸倒引当金200を計上した。
 なお、税務上は全額損金不算入であった。

※貸倒引当金の繰り入れ以外に、費用の発生はありません

(会計) (税務)
収益・益金 500 500
費用・損金 200 0
利益・所得 300 500

→会計上は費用として認識だが、税務上は損金として計上できず、一時差異が発生。

✕2期
 取引先であるA社に対する200の債権について、貸し倒れが生じてしまった。
 なお、税務上は全額が損金となる事象であった。

※会計上は、✕1期に計上した貸倒引当金を取り崩したため、費用はゼロである。

(会計) (税務)
収益・益金 500 500
費用・損金 0 200
利益・所得 500 300

→✕2期にて税務上の損金として計上され、✕1期にて生じた一時差異は解消。
 (会計上は、✕1期にて既に費用を計上)

 一時差異が解消する✕2期の税務上の課税所得計算をする上では、損金計上される200だけ、課税所得を“減額”させている。

・将来加算一時差異
✕1期
A社株式を1,000で取得し、その他有価証券に該当。
✕1期末において、時価が1,200となった。

会計
 時価評価を行うことで、200(時価 1,200 ― 取得価額 1,000)の評価差額をその他有価証券評価差額金で、純資産にて計上。
※損益計算書での計上については、該当なし。

税務
 時価評価は行わない。

→会計上、時価評価をしたため、評価差額200だけ、税務上の資産(その他有価証券)残高と差額が生じ、一時差異が発生。

✕2期
 A社株式を、1,200で売却した。

(会計) (税務)
収益・益金 200 200※A社株式の売却益のみ
費用・損金 0 0
利益・所得 200 200

→会計上と税務上の資産(その他有価証券)残高のズレの要因となっていたA社株式が売却され、✕1期にて生じた一時差異は解消。

 一時差異が解消する✕2期の税務上の課税所得計算をする上では、益金計上される200だけ、課税所得を“増額”させている。

繰延税金資産及び繰延税金負債の計上

 一時差異等に係る税金の額は、将来の会計期間において回収又は支払が見込まれない税金の額を除き、繰延税金資産又は繰延税金負債として計上しなければなりません。

(具体例)
✕1期
 取引先であるA社に対する債権について、将来において貸し倒れが見込まれたため、会計上、貸倒引当金200を計上した。
 なお、税務上は全額損金不算入であった。

※貸倒引当金の繰り入れ以外に、費用の発生は無い

(会計) (税務)
収益・益金 500 500
費用・損金 200 0
利益・所得 300 500

→将来減算一時差異が200発生

一時差異に係る税金の額を計算するため、上記の将来減算一時差異200に法定実行税率30%を乗じると、60が計算されます。

<会計仕訳>

借方 貸方
繰延税金資産 60 法人税等調整額 60
(会計)
収益 500
費用 200
利益 300
法人税等 150←所得 500×30%
法人税等調整額  △60
税金費用 90

 会計上の損益計算書における税負担率(法人税等÷税前利益)を計算した場合、30%(税金費用 90÷税前利益 300)となる。

✕2期
 取引先であるA社に対する200の債権について、貸し倒れが生じてしまった。
 なお、税務上は全額が損金となる事象であった。

※会計上は、✕1期に計上した貸倒引当金を取り崩したため、費用はゼロです。

(会計) (税務)
収益・益金 500 500
費用・損金 0 200
利益・所得 500 300

→将来減算一時差異が200解消

<会計仕訳>

借方 貸方
法人税等調整額 60 繰延税金資産 60
(会計)
収益 500
費用 0
利益・所得 500
法人税等 90←所得 300×30%
法人税等調整額 60
税金費用 150

会計上の損益計算書における税負担率(法人税等÷税前利益)を計算した場合、30%(税金費用 150÷税前利益 500)となります。

✕1期と✕2期の税負担率を確認した場合、税効果会計を適用しているか否かで、下記の様になる。
(税効果会計の適用をしていないケースの計算例は、“税効果会計の目的”を参照)

税効果適用“前” 税効果適用“後”
✕1期 50% 30%
✕2期 18% 30%

税効果会計の適用をすることで、法人税その他利益に関連する金額を課税標準とする税金の額を適切に期間配分することにより、法人税等を控除する前の当期純利益と法人税等を合理的に対応させることができます。
「参照元:金融庁|税効果会計に係る会計基準

なお、資産の評価替えにより生じた評価差額が直接資本の部に計上される場合には、当該評価差額に係る繰延税金資産又は繰延税金負債を、相手科目を法人税等調整額とするのではなく、当該評価差額から控除して計上するものとします。

(具体例)
✕1期
A社株式を1,000で取得し、その他有価証券に該当。
✕1期末において、時価が1,200となった。

会計
 時価評価を行うことで、200(時価 1,200 ― 取得価額 1,000)の評価差額をその他有価証券評価差額金で、純資産にて計上。
 ※損益計算書での計上については、該当なし。

税務
 時価評価は行わない。

→会計上、時価評価をしたため、評価差額200だけ、税務上の資産(その他有価証券)残高と差額が生じ、一時差異が発生。

<会計仕訳>

借方 貸方
その他有価証券 200 繰延税金負債 60
その他有価証券評価差額金 140

繰延税金資産及び繰延税金負債等の表示方法

繰延税金資産は投資その他の資産、繰延税金負債は固定負債として、表示を行う必要があります。繰延税金資産、繰延税金負債のそれぞれに残高がある場合には、相殺して表示するものとします。ただし、異なる納税主体の繰延税金資産と繰延税金負債は、原則として相殺してはなりません。
「参照元:金融庁|税効果会計に係る会計基準

(具体例)
 連結財務諸表を作成するにあたり、各社より下記の様にそれぞれ勘定科目の残高が報告された。

A社:繰延税金資産 100
B社:繰延税金資産 150
C社:繰延税金負債 30

 連結財務諸表の残高は、繰延税金資産 250(A社 100+B社 150)、繰延税金負債 30(C社 30)と、それぞれ資産、及び負債に計上される。
(各社で納税主体が異なるため、繰延税金資産、及び繰延税金負債を相殺しない。)

繰越欠損金と税効果会計の関係

企業会計基準委員会の税効果会計に係る会計基準の適用方針のページでは、下記のように記載しております。

(1)「税務上の繰越欠損金は一時差異ではないが、一時差異と同様の税効果を有する。つまり、税務上の繰越欠損金は、その発生年度の翌期以降で繰越期限切れとなるまでの期間(以下「繰越期間」という。)に課税所得が生じた場合には、課税所得を減額することができる。その結果、課税所得が生じた年度の法人税等として納付すべき額は、税務上の繰越欠損金が存在しない場合に比べて軽減されるため、一時差異に準ずるものとして取り扱う。」

(2)「税務上の繰越外国税額控除が発生した場合(控除対象となる外国法人税等の額が外国税額控除限度額を超える場合)には、翌期以降の繰越可能な期間に発生する外国税額控除余裕額(控除対象となる外国法人税等の額があるときはその金額を外国税額控除限度額から控除後)を限度として税額を控除することが認められることから、繰越外国税額控除についても一時差異に準ずるものとする。」

「引用元:ASBJ|企業会計基準適用指針第28号 税効果会計に係る会計基準の適用指針

(具体例)
✕1期
A社では600の税務上の欠損金が生じた。

<会計仕訳>

借方 貸方
繰延税金資産 180 法人税等調整額 180

※欠損金 600×法定実行税率 30%

(会計) (税務)
収益・益金 500 500
費用・損金 1,100 1,100
利益・所得 △600 △600
法人税等 0←欠損のため、税額は生じない
法人税等調整額 △180
税金費用 △180

✕2期
A社では800の課税所得が生じた。
→税務上の所得計算の中で、✕1期に生じた欠損金600全額を差し引くことができた。

<会計仕訳>

借方 貸方
法人税等調整額 180 繰延税金資産 180

※欠損金 600×法定実行税率 30%

(会計) (税務)
収益・益金 1,000 1,000
費用・損金 200 200
利益・所得 800 800
法人税等 60←欠損金の控除後所得 200×30%
法人税等調整額 180
税金費用 240

→✕1期に生じた欠損金600だけ、✕2期の課税所得を減額でき、結果的にその分だけ、✕2期の法人税等として納付すべき額を軽減できた。
(欠損金が過去になかった場合、✕2期の課税所得 800×法定実行税率 30%=240>60となっていた。)

繰延税金資産の回収可能性の判断方法

 税効果会計基準 第二 二 1にある文章では

繰延税金資産又は繰延税金負債は、一時差異等に係る税金の額から将来の会計期間において回収又は支払が見込まれない税金の額を控除して計上しなければならない
「引用元:ASBJ|企業会計基準適用指針第26号 繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針
に記載されています。

企業会計基準委員会が発表している『企業会計基準適用指針第 26 号 繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針』では「繰延税金資産の回収可能性の判断」を以下のように定義づけられています。

 将来減算一時差異及び税務上の繰越欠損金に係る繰延税金資産の回収可能性は、次の(1)から(3)に基づいて、将来の税金負担額を軽減する効果を有するかどうかを判断する。

(1)収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得

① 将来減算一時差異に係る繰延税金資産の回収可能性
将来減算一時差異の解消見込年度及びその解消見込年度を基準として税務上の欠損金の繰戻し及び繰越しが認められる期間(以下「繰戻・繰越期間」という。)に、一時差異等加減算前課税所得が生じる可能性が高いと見込まれるかどうか。

② 税務上の繰越欠損金に係る繰延税金資産の回収可能性
税務上の繰越欠損金が生じた事業年度の翌期から繰越期限切れとなるまでの期間(以下「繰越期間」という。)に、一時差異等加減算前課税所得が生じる可能性が高いと見込まれるかどうか。

上記①の解消見込年度及び繰戻・繰越期間に、又は上記②の繰越期間に、一時差異等加減算前課税所得が生じる可能性が高いと見込まれるかどうかを判断するためには、過去の業績や納税状況、将来の業績予測等を総合的に勘案し、将来の一時差異等加減算前課税所得を合理的に見積る必要がある。

(2)タックス・プランニングに基づく一時差異等加減算前課税所得
将来減算一時差異の解消見込年度及び繰戻・繰越期間又は繰越期間に、含み益のある固定資産又は有価証券を売却する等のタックス・プランニングに基づく一時差異等加減算前課税所得が生じる可能性が高いと見込まれるかどうか。

(3)将来加算一時差異
① 将来減算一時差異に係る繰延税金資産の回収可能性
将来減算一時差異の解消見込年度及び繰戻・繰越期間に、将来加算一時差異が解消されると見込まれるかどうか。

② 税務上の繰越欠損金に係る繰延税金資産の回収可能性
繰越期間に税務上の繰越欠損金と相殺される将来加算一時差異が解消されると見込まれるかどうか。

「引用元:ASBJ|企業会計基準適用指針第26号 繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針

(具体例)
 A社の✕1期末時点における一時差異残高はそれぞれ下記の通りであった。

・将来減算一時差異 700
〈解消予定時期〉
  ✕2期:500 ✕3期:100 ✕4期:100

・将来加算一時差異 600
〈解消予定時期〉
  ✕2期:100 ✕3期:400 ✕4期:100

✕2期 ✕3期 ✕4期
将来減算一時差異 △500 △100 △100
将来加算一時差異 100 400100
△400 300 0

 ✕2期で相殺しきれなかった将来減算一時差異の解消見込額 △400について、解消見込年度を基準に、繰戻・繰越期間の将来加算一時差異の見込額と相殺する。今回のケースでは、✕3期の300と相殺を行うことができる。
 結果として、△100だけ相殺することができないため、将来の一時差異等加減算前課税所得の見積額と解消見込年度ごとに相殺を行う。

✕2期 ✕3期 ✕4期
一時差異等加減算前課税所得 50 200 100

 ✕2期の一時差異等加減算前課税所得の見積額は50であり、その分だけ相殺を行うことができるが、残り△50だけ相殺することができません。
 相殺がしきれなかった将来減算一時差異の解消見込額について、解消見込年度を基準に、繰戻・繰越期間の一時差異等加減算前課税所得の見積額と相殺を行います。
 今回のケースでは、✕3期の一時差異等加減算前課税所得の見積額が200あるため、全額を相殺することができる。

 なお、繰延税金資産及び繰延税金負債の計算をする際に用いる税法は、決算日において国会で成立している税法に規定されている方法に基づき計算します。また、繰延税金資産及び繰延税金負債の金額は、回収又は支払いが行われると見込まれる期の税率に基づいて計算を行います。

企業の分類に応じた繰延税金資産の回収可能性に関する取扱い

 企業会計基準委員会が公表している企業会計基準適用指針第28号では、繰延税金資産の回収可能性について以下のように定められています。

収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得等に基づいて繰延税金資産の回収可能性を判断する際に(第6項参照)、第16項から第32項に従って、要件に基づき企業を分類し、当該分類に応じて、回収が見込まれる繰延税金資産の計上額を決定する。

「引用元:ASBJ|企業会計基準適用指針第26号 繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針

この基準が示していることを簡単な言葉で言い換えれば、「企業の収益力等を前提に、将来本当に利益・課税所得を出せるのかどうかを見極め、その見込みに応じて繰延税金資産をどこまで計上できるかを決める」という考え方です。安定して利益・課税所得を出している会社は多めに計上でき、逆に赤字が続いている会社や利益・課税所得の見通しが不透明な会社は、計上できる金額が制限されるケースがあります。

これは、単なるテクニカルな会計処理ではなく、企業の経営状態そのものが判断に直結する点で重要な基準といえます。
それぞれの分類は下記の通りです。

((分類1)に該当する企業の取扱い)
次の要件をいずれも満たす企業は、(分類1)に該当する。

(1)過去(3年)及び当期のすべての事業年度において、期末における将来減算一時差異を十分に上回る課税所得が生じている。
(2)当期末において、近い将来に経営環境に著しい変化が見込まれない。

(分類1)に該当する企業においては、原則として、繰延税金資産の全額について回収可能性があるものとする。

((分類2)に該当する企業の取扱い)
次の要件をいずれも満たす企業は、(分類2)に該当する。

(1)過去(3年)及び当期のすべての事業年度において、臨時的な原因により生じたものを除いた課税所得が、期末における将来減算一時差異を下回るものの、安定的に生じている。
(2)当期末において、近い将来に経営環境に著しい変化が見込まれない。
(3)過去(3年)及び当期のいずれの事業年度においても重要な税務上の欠損金が生じていない。

(分類2)に該当する企業においては、一時差異等のスケジューリングの結果、繰延税金資産を見積る場合、当該繰延税金資産は回収可能性があるものとする。

なお、(分類2)に該当する企業においては、原則として、スケジューリング不能な将来減算一時差異に係る繰延税金資産について、回収可能性がないものとする。

ただし、スケジューリング不能な将来減算一時差異のうち、税務上の損金の算入時期が個別に特定できないが将来のいずれかの時点で損金に算入される可能性が高いと見込まれるものについて、当該将来のいずれかの時点で回収できることを企業が合理的な根拠をもって説明する場合、当該スケジューリング不能な将来減算一時差異に係る繰延税金資産は回収可能性があるものとする。

((分類3)に該当する企業の取扱い)
 次の要件をいずれも満たす企業は、第26項(2)又は(3)の要件を満たす場合を除き、(分類3)に該当する。

(1)過去(3年)及び当期において、臨時的な原因により生じたものを除いた課税所得が大きく増減している。
(2)過去(3年)及び当期のいずれの事業年度においても重要な税務上の欠損金が生じていない。
なお、(1)における課税所得から臨時的な原因により生じたものを除いた数値は、負の値となる場合を含む。

(分類3)に該当する企業においては、将来の合理的な見積可能期間(おおむね5年)以内の一時差異等加減算前課税所得の見積額に基づいて、当該見積可能期間の一時差異等のスケジューリングの結果、繰延税金資産を見積る場合、当該繰延税金資産は回収可能性があるものとする。

第23項にかかわらず、(分類3)に該当する企業においては、臨時的な原因により生じたものを除いた課税所得が大きく増減している原因、中長期計画、過去における中長期計画の達成状況、過去(3年)及び当期の課税所得の推移等を勘案して、5年を超える見積可能期間においてスケジューリングされた一時差異等に係る繰延税金資産が回収可能であることを企業が合理的な根拠をもって説明する場合、当該繰延税金資産は回収可能性があるものとする。
なお、ここでいう中長期計画は、おおむね3年から5年の計画を想定している(第28項、第29項及び第32項において同じ。)。

((分類4)に該当する企業の取扱い)
次のいずれかの要件を満たし、かつ、翌期において一時差異等加減算前課税所得が生じることが見込まれる企業は、(分類4)に該当する。

(1)過去(3年)又は当期において、重要な税務上の欠損金が生じている。
(2)過去(3年)において、重要な税務上の欠損金の繰越期限切れとなった事実がある。
(3)当期末において、重要な税務上の欠損金の繰越期限切れが見込まれる。

(分類4)に該当する企業においては、翌期の一時差異等加減算前課税所得の見積額に基づいて、翌期の一時差異等のスケジューリングの結果、繰延税金資産を見積る場合、当該繰延税金資産は回収可能性があるものとする。
第27項にかかわらず、第26項の要件を満たす企業においては、重要な税務上の欠損金が生じた原因、中長期計画、過去における中長期計画の達成状況、過去(3年)及び当期の課税所得又は税務上の欠損金の推移等を勘案して、将来の一時差異等加減算前課税所得を見積る場合、将来において5年超にわたり一時差異等加減算前課税所得が安定的に生じることを企業が合理的な根拠をもって説明するときは(分類2)に該当するものとして取り扱い、第20項及び第21項の定めに従って繰延税金資産を見積る場合、当該繰延税金資産は回収可能性があるものとする。
また、第27項にかかわらず、第26項の要件を満たす企業においては、重要な税務上の欠損金が生じた原因、中長期計画、過去における中長期計画の達成状況、過去(3年)及び当期の課税所得又は税務上の欠損金の推移等を勘案して、将来の一時差異等加減算前課税所得を見積る場合、将来においておおむね3年から5年程度は一時差異等加減算前課税所得が生じることを企業が合理的な根拠をもって説明するときは(分類3)に該当するものとして取り扱い、第23項の定めに従って繰延税金資産を見積る場合、当該繰延税金資産は回収可能性があるものとする。

((分類5)に該当する企業の取扱い)
 次の要件をいずれも満たす企業は、(分類5)に該当する。

(1)過去(3年)及び当期のすべての事業年度において、重要な税務上の欠損金が生じている。
(2)翌期においても重要な税務上の欠損金が生じることが見込まれる。

 (分類5)に該当する企業においては、原則として、繰延税金資産の回収可能性はないものとする。

「引用元:ASBJ|企業会計基準適用指針第26号 繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針

まとめ

税効果会計は、会計と税務のルールの違いによって生じる企業会計と税務上の課税所得計算との間に発生するズレ(差異)を調整し、法人税等(法人税その他利益に関連する金額を課税標準とする税金)を適切な期間に配分するための会計処理です。

特に、繰延税金資産の回収可能性の判断は、将来の課税所得の見積もり等に深く関わるため、専門的な知見が欠かせません。
複雑な判断が求められる場面では、公認会計士や税理士などの専門家のサポートを活用し、適切な会計処理を行うことが求められます。


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